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ムコ動物病院の診療録

病院からのお知らせなどを掲載していきます。

フィラリアのお話

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のっけから気持ち悪い動画ですみません.
もしもフィラリア予防が不完全だったら,ご家族のワンコにもこんなのがいるかもしれません.

5月と言えば,フィラリア予防開始のシーズンです.フィラリアというのは・・・
1)フィラリアに感染した犬から蚊が吸血
2)蚊の中に子虫(ミクロフィラリア)が侵入
3)蚊の中で子虫が少し成長
4)その蚊が他の犬,猫,フェレットを吸血
5)吸血時,子虫が蚊から体内に移動
6)子虫は少し成長しつつ,皮下から血管内に移動
7)この幼虫はさらに成長を続け,心臓に寄生
8)成虫になると,子虫を生み,血液に子虫が大量に!
9)心臓を始め,全身のあちこちにダメージ
10)最悪の場合,死に至る

大まかにいうとこんな病気です.最初の動画は8)の状態です.フィラリアなんてあまり聞かないと思われるかもしれませんが,この動画は最近当院で感染が確認されたワンコのものです.1滴の血液からこのような子虫が数匹見つかります.
ちなみにニャンコやフェレットでは成虫の寄生はあっても,子虫を生むところまでいかないというのが定説です.

予防は6)の状態の時に,弱い薬で駆虫(虫下し)をしてしまうという方法で行います.成長する前に駆虫する必要がありますので,月に一回投薬する必要があります.お薬は「飲み薬」「背中に垂らすスポット剤」「注射」があります.

大事なご家族のためにもしっかり予防してあげましょう.

院長 北尾
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犬の子宮蓄膿症

※ 当記事には摘出臓器の写真などが掲載されています。苦手な方は閲覧をお避け下さい。
 

子宮蓄膿症とは?

雌のワンちゃんにおいて、いわゆる女性ホルモンのバランスが崩れて、子宮の中に分泌物が貯留し、そこに細菌感染が起きることで発生する病気で、命に関わることもある病気です。細菌は、便や膣の中にいる大腸菌が一番多いと報告されています。
 

臨床徴候

(避妊手術をしていない雌のワンちゃんで、次のことがあったら、要注意!!
 
・陰部からの化膿性分泌物(分泌物がない場合もあります)
・通常の発情出血とは異なる発情周期での陰部からの出血
・多飲多尿・食欲減退・嗜眠(ぐったり)・嘔吐・腹囲膨満
・重症例では、低体温症やショックに至り、瀕死状態になることもあります。
 

診断

・外陰部からの化膿性分泌物の存在(分泌物がない場合もあります。)
・レントゲン検査や腹部超音波検査により、液体で満たされ、大きくなった子宮の確認
・血液検査・尿検査などによる重症度の評価。
 

正常なレントゲン(右下の姿勢):子宮は確認できません
 

子宮蓄膿症の子のレントゲン(同じく右下):大きく腫大した子宮が確認できます(黄色矢印)
 

超音波(エコー)検査:(A)膀胱、(B)液体の貯留した子宮
 

治療

 
・基本的かつ最善な方法は外科手術(子宮卵巣摘出術)です。これは、治療として一番確実かつ完治させるので、再発を防ぐメリットがあります。
 またお薬を使用する内科治療もありますが、再発率が高く、治療によるリスクもありますので、当院ではほとんど行っておりません。
 
・手術の際は全身麻酔になりますので、リスクが無いわけではありません。しかし、現在のワンちゃんの全身麻酔は、昔に比べ格段に安全性が上がっており、麻酔により生命を脅かすことは、ほとんどなくなっています。ただし、患者の状態が悪ければ悪い程、麻酔リスクは高くなりますから、手術を行うのが遅くなるほど状態が悪化して、麻酔リスクが高くなってしまいます。ですから、できるだけ早い段階での手術が望まれます。
 
・実際に手術を行う前には、必ず点滴などを行い、手術に向けて体液のバランスを整え、より麻酔のリスクを下げるようにしています。
 
・また、子宮蓄膿症では、手術後においても腎機能低下を引き起こすことがあるので、手術後も油断はできません。手術後は数日間、入院にて点滴治療を行うことで、より腎機能低下を引き起こさないようにします。
 

摘出した子宮蓄膿症の子宮・卵巣
 

若齢犬の正常な子宮、卵巣
 

予防

 
・最も確実な予防法は、若いうちの避妊手術(子宮卵巣摘出術)です。それにより、子宮や卵巣に関連したすべての疾患も予防することができます。
 
・また、若くて元気なうちに行うことで、全身麻酔のリスクをより少なくすることができ、また、子宮や卵巣の異常が起こる前に避妊手術を行うことで、本人への体の負担を最小限にすることができます。
 
 
避妊手術(子宮卵巣摘出術)をすることが、病気のリスクを下げることにつながり、より安心して生活を送ることができます。また病気になる前に行うことで、最大限のメリットを得ることもできます。
ぜひ、避妊手術に関して前向きに考えて頂けたらと思います。
 
獣医師 山下
ムコ動物病院 http://www.muco.jp

犬の停留精巣腫瘍

※ 当記事には摘出臓器の写真などが掲載されています。苦手な方は閲覧をお避け下さい。

停留精巣とは?

通常、男の子の精巣(睾丸)は生後半年くらいまでにおなかの外に下りてきて、陰嚢の中に納まります。
ところがまれに、精巣がおなかの中に残ったままになったり、陰嚢に納まる前に止まってしまったりする場合があります。これを停留精巣、または陰睾と言います。

停留精巣のリスク

精巣はおなかの外に出ることで体温より低い環境に置かれ、これが精子の産生に必要な条件となります。
したがって、おなかの中に残ったままだと精子が作られません。
しかし、もともと細胞分裂を盛んに行って精子を作る組織なので、非常に高い確率で腫瘍化します。腫瘍化すると、元々テストステロン(いわゆる男性ホルモン)を中心に分泌するはずの精巣がエストロジェン(いわゆる女性ホルモン)を中心に分泌しはじめ、身体が雌化したり、脱毛が起こったり、貧血になったりします。また、腫瘍が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、様々な症状を起こします。
当院では停留精巣が見つかった場合、早期の切除をお勧めしておりますが、これはこういった腫瘍を防ぐためです。

症例

ミニチュア・ダックスフント 14歳の男の子
左右両方の停留精巣。
 
元々他院にかかっておられ、そこでは手術はいらないと言われていたそうです。当院へは椎間板ヘルニアで急に下半身がマヒして来院されました。このヘルニアに関しては手術で完全に良くなりました。
 
このヘルニアの手術の時にすでに停留精巣の手術をお勧めしていたのですが、残念ながら同意を得ることができず、そのままになっていたところ
 
・乳首が大きくなる
・どんどん太る
・左右対称性の脱毛
 
と、いった症状が見られるようになり、やがてよく嘔吐をするようになりました。各種検査を行ったところ
 
・血液検査で白血球の上昇
 
・レントゲンでお腹の中に大きなできもの

レントゲン(右下の姿勢):黄色い矢印ができもの
 

レントゲン(仰向けの姿勢):同じく黄色い矢印ができもの
 
・エコー検査でも液体が複数溜まったできもの

エコー写真:少し見にくいですが、真ん中にボコボコしたものが確認できます。
 
以上が確認され、早期の手術を行うようお願いし、手術を行いました。
お腹を開けると、巨大化した精巣と普通のサイズより小ぶりなもうひとつの精巣、複数のリンパ節と思われる鶏卵くらいの大きさになったリンパ節があり、出来る限り取り出しました。
 

小ぶりな方の精巣:実はこれも腫瘍化していました。
 

 巨大化した精巣:上の写真と比べるとどれだけ巨大化しているかわかると思います
 

大きく腫れたリンパ節:形もボコボコしています
 
取り出したできものとリンパ節を病理検査に出したところ、やはり精巣腫瘍の一種である「セルトリ細胞腫」と「セルトリ細胞腫の転移したリンパ節」でした。しかも、精巣は大きい方も小さい方も腫瘍という結果でした。
通常、セルトリ細胞腫は転移しにくく、摘出さえすれば治ることが多いのですが、転移を起こした場合は今後の予想は非常に悪いものとなります。手術で完全に取り切れたわけではなかったので、抗がん剤を使うか飼主様と相談した結果、経過を見ることになり、手術後3カ月はいい状態を保てたのですが・・・
 
・手術から3カ月

レントゲン(右下の姿勢):黄色の矢印と青の矢頭の部分に新たなできものがあります。
 

レントゲン(仰向けの姿勢):同じく黄色の矢印と青い矢頭の部分にできもの
 

エコー:いびつな形のできものが見られます。
 

エコー写真:正常な左の腎臓
 

エコー写真:右の腎臓の構造が破たんしています。
 
転移でほぼ間違いないという判断をしました。
飼主様は特別な処置は望まれず、このまま静かにご自宅で過ごすことを望まれました。
 
・手術から4カ月

レントゲン(右下の姿勢):先月のできものがさらに大きくなってしまいました
 

レントゲン(仰向けの姿勢):やはりできものが大きくなっています。
 

エコー
 
手術から半年後、残念ながらこの子は亡くなりました。
 

最後に

なぜ私が一番最初にこの症例を公開したのか。最初なんだから、もっとうまくいった症例を公開する方が印象はいいでしょう。でも私がもっともお伝えしたかったこと。それはこの腫瘍は防ぐことができる腫瘍だったということです。若いうちに停留精巣の摘出手術を行っていさえすれば、この子は少なくともこの腫瘍で亡くなることはなかったはずです。健康な体にメスを入れることは確かに心苦しいでしょう。我々ももちろんそうです。しかし、このような事態を招くなら、健康で麻酔のリスクも低いうちに手術をしていた方がいいと思いませんか?
 
停留精巣の子は若いうちに精巣を摘出してあげましょう!
 
                                      獣医師 北尾
ムコ動物病院 http://www.muco.jp

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