※ 当記事には摘出臓器の写真などが掲載されています。苦手な方は閲覧をお避け下さい。
子宮蓄膿症とは?
雌のワンちゃんにおいて、いわゆる女性ホルモンのバランスが崩れて、子宮の中に分泌物が貯留し、そこに細菌感染が起きることで発生する病気で、命に関わることもある病気です。細菌は、便や膣の中にいる大腸菌が一番多いと報告されています。
臨床徴候
(避妊手術をしていない雌のワンちゃんで、次のことがあったら、要注意!!)
・陰部からの化膿性分泌物(分泌物がない場合もあります)
・通常の発情出血とは異なる発情周期での陰部からの出血
・多飲多尿・食欲減退・嗜眠(ぐったり)・嘔吐・腹囲膨満
・重症例では、低体温症やショックに至り、瀕死状態になることもあります。
診断
・外陰部からの化膿性分泌物の存在(分泌物がない場合もあります。)・レントゲン検査や腹部超音波検査により、液体で満たされ、大きくなった子宮の確認
・血液検査・尿検査などによる重症度の評価。
正常なレントゲン(右下の姿勢):子宮は確認できません
子宮蓄膿症の子のレントゲン(同じく右下):大きく腫大した子宮が確認できます(黄色矢印)
超音波(エコー)検査:(A)膀胱、(B)液体の貯留した子宮
治療
・基本的かつ最善な方法は外科手術(子宮卵巣摘出術)です。これは、治療として一番確実かつ完治させるので、再発を防ぐメリットがあります。
またお薬を使用する内科治療もありますが、再発率が高く、治療によるリスクもありますので、当院ではほとんど行っておりません。
・手術の際は全身麻酔になりますので、リスクが無いわけではありません。しかし、現在のワンちゃんの全身麻酔は、昔に比べ格段に安全性が上がっており、麻酔により生命を脅かすことは、ほとんどなくなっています。ただし、患者の状態が悪ければ悪い程、麻酔リスクは高くなりますから、手術を行うのが遅くなるほど状態が悪化して、麻酔リスクが高くなってしまいます。ですから、できるだけ早い段階での手術が望まれます。
・実際に手術を行う前には、必ず点滴などを行い、手術に向けて体液のバランスを整え、より麻酔のリスクを下げるようにしています。
・また、子宮蓄膿症では、手術後においても腎機能低下を引き起こすことがあるので、手術後も油断はできません。手術後は数日間、入院にて点滴治療を行うことで、より腎機能低下を引き起こさないようにします。
摘出した子宮蓄膿症の子宮・卵巣
若齢犬の正常な子宮、卵巣
予防
・最も確実な予防法は、若いうちの避妊手術(子宮卵巣摘出術)です。それにより、子宮や卵巣に関連したすべての疾患も予防することができます。
・また、若くて元気なうちに行うことで、全身麻酔のリスクをより少なくすることができ、また、子宮や卵巣の異常が起こる前に避妊手術を行うことで、本人への体の負担を最小限にすることができます。
避妊手術(子宮卵巣摘出術)をすることが、病気のリスクを下げることにつながり、より安心して生活を送ることができます。また病気になる前に行うことで、最大限のメリットを得ることもできます。
ぜひ、避妊手術に関して前向きに考えて頂けたらと思います。
獣医師 山下
ムコ動物病院 http://www.muco.jp
スポンサーサイト